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「耳で聴く読書」として、家事や通勤のすきま時間を有効活用できるオーディオブック。ここ最近、新たな読書の形として流行しています。小説やビジネス書に限らず、語学学習、講演、ニュースというようにオーディオブックにはさまざまな種類があり、だれもが読書を楽しめる手段であるのが魅力です。
しかし、日本においてオーディオブックはまだまだ発展途上の分野です。実際にまだオーディオブックで読書をしたことがないという方もいるのではないでしょうか。「オーディオブックにはどういった種類があるのか気になる」「オーディオブックにはどのようなメリットがあるか知りたい」という方へ、この記事ではオーディオブックの歴史やメリットについてご紹介します。ぜひ最後までご覧ください。
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オーディオブックとは、ナレーターが書籍などを読み上げた音声のことで「聴く本」とも呼ばれます。それでは、オーディオブックはどのようにして誕生し、活用されているのでしょうか。オーディオブックを深く理解するために以下の3点について詳しく解説してきます。
ひと昔前は、「CDブック」「カセットブック」などと呼ばれていました。媒体こそ違いますが、どれも耳で聴く音声コンテンツです。1980年代ごろに一度流行したものの、当初日本にはあまり定着しませんでした。一方アメリカでは文化の一つとして広く拡大していきます。これは、電車社会の日本に対し、アメリカが車社会であることが影響しているようです。車内でカセットテープやCDを聞くというように日常生活のなかにオーディオブックを取り入れやすく、早くからオーディオブックが普及したといわれています。Audio Publishers Association(APA)の調査によると、アメリカにおける2018年のオーディオブック売上は計9億4,000万ドル(約1,016億円)に達したといい、いまだに市場は拡大しつづけています。
そんな中、日本ではIT化が急速に進みポータブルオーディオプレーヤーやスマートフォン、ワイヤレスイヤホンなどが普及します。ダウンロードすればいつでも音声を聴ける機器が多数登場したことで、オーディオブックが再び注目を浴びることになりました。日本では株式会社オトバンクが2007年に国内で初めてオーディオブックのダウンロード配信を開始し、現在は多数の会社でサービスなどを提供。オーディオブックの専用アプリも誕生し、購入型やサブスクリプション型などさまざまな方法で提供しています。
官民両方の調査研究事業を展開する日本能率協会総合研究所のデータによると、日本国内におけるオーディオブックの市場規模は2021年で140億円、2024年度には約260億円に到達すると予想されています。オーディオブックはこれから急成長を遂げる文化といえそうです。
オーディオブックといえば小説やビジネス書、自己啓発本のイメージが強いですが、それだけに限りません。以下のようにさまざまな種類があります。
このように、音声によるコンテンツのことを広くオーディオブックと呼びます。オーディオブックはスマートフォンがあれば混雑した電車の中や待ち時間の間にも聞けるのが特徴です。一冊の本をじっくり聴くのはもちろん、ラジオ感覚でニュースなどの情報を得る手段としても活用されています。 また、辞書や教科書を出版する三省堂では「聞く教科書」として教科書のオーディオブックも配信しているようです。
音声によるオーディオブックの価格相場は1冊1,500~3,000円であり、特別安いというわけではありません。これは1冊のオーディオブックができるまでに多くの手順を踏む必要があるためです。オーディオブックは以下のような流れでできていきます。
1.作品選び
2.著作権の許諾
3.音声の録音
4.編集
特に、著作権の許諾は重要な工程です。オーディオブックは原作となる作品を二次利用した「二次的著作物」に該当します。著作権法第2条1項11号によると、二次的著作物とは以下のとおりです。
著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物をいう。
e-GOV法令検索 著作権法
原作を無断で利用することは著作権侵害に該当しますので、原作者に許可をもらう必要があります。そのため、オーディオブックにしたいと思う本が全てオーディオブックになるとは限らないのです。 また、作品を読む際にもナレーターがただ読めばいいといいうわけではありません。作品に合わせたスピードや強弱、声のトーンなど細かく調整し、聴きごたえのある作品にしています。このように時間をかけて1冊のオーディオブックは完成するのです。
オーディオブックの先駆者である株式会社オトバンクが発表した「オーディオブック白書2021」によると、コロナ禍で在宅時間が増えたことによりオーディオブックの利用者がこれまでに比べて3割ほど増加したようです。
コロナ禍でのオーディオブックの利用について調査したところ、「利用がかなり増えた」「利用がやや増えた」と回答した人は3割(31%)に到達しました。一方で、「利用が減った」と回答した人は、1割(5%)に満たず非常に少数で、オーディオブックの利用が増加傾向にあることが分かりました。
コロナ禍で3割が「オーディオブックの利用増えた」と回答 。自粛疲れで“目疲れ”人が増加し、「耳時間」に注目集まる<オーディオブック白書2021>|株式会社オトバンクのプレスリリース (prtimes.jp)
在宅勤務によって自由時間や運動不足解消のために体を動かす機会が増えたことで、時間を有効活用するためにオーディオブックを利用する人も増加しました。
オーディオブックには時間の有効活用以外にもさまざまなメリットがあります。特に以下の6つが特徴です。
それぞれ詳しく解説します。
オーディオブックの一番のメリットは「すきま時間」を活用できることでしょう。音声をダウンロードすればいつでもどこでも音声を聴けるため、通勤の電車の中、仕事の5分休憩、家事の合間などちょっとした時間に読書ができます。
また、「家事をしながら」「運動しながら」というように「ながら読書」で時間を有効活用できることも魅力です。「すきま時間」や「ながら時間」を活用することで、読書をするまとまった時間をとることができない人でも1冊を読み切ることは難しくありません。
たとえば家から会社まで片道1時間かかるサラーリーマンがいたとします。通勤の往復2時間、出勤準備をしているときの30分、昼休憩の30分、帰宅後寝る前の1時間 いった「すきま時間」を合計すれば毎日4時間ほどの時間を確保することが可能です。1本3~4時間ほどのオーディオブックも多数ありますので、1日1冊の本を読めてしまいます。また、気軽に何回も繰り返して聞けるため、記憶にも定着しやすくなります。
本によって2~3時間で聞き終わるものから10時間を超えるものまでさまざまですが、「できるだけ早く読み終わりたい」というときには1.5倍速、2倍速などの速度調整が可能です。
紙の本でも「速読」という技法はありますが、だれでもすぐに習得できるわけではありません。しかしオーディオブックなら簡単に速度を調整できるので非常に便利です。通常の再生速度では5時間かかる本であっても、速度を2倍速にすれば2時間半で読み終わります。 また、速度を速くするだけでなく遅くすることも可能です。語学学習などで発音をゆっくり聴きたいときなどに重宝します。
ナレーターが感情を込めて朗読する落語やドラマ音声は文字で読むより臨場感が得られ、よりコンテンツを楽しめるでしょう。特に講演やインタビューなどは、文字だけだとその場の雰囲気がつかみにくいものです。音声にすることによって、現場の空気をより身近に感じられます。このようにオーディオブックでは、紙の本では体験できない音声ならではの楽しみ方が可能となるのです。
また語学学習にもオーディオブックは非常に有効です。学習する言語の発音を実際に聴けることで、リスニング力やスピーキング力の向上も期待できます。
現代人は目を酷使しています。仕事では常にパソコンを見て、空いた時間にはスマホでSNSをチェック。このような状況から若い人も「スマホ老眼」になる人が多いほど目の疲労は深刻な問題です。
そんななか耳で聴くオーディオブックは目を使いません。「情報は手に入れたいけれど目が疲れて文字を読むことが億劫」という現代人にとってオーディオブックは理想的なツールといえます。 文字を読む必要がないため、夜寝る前に暗い部屋で聴いたり、目を閉じてリラックスしながら聞いたりできるのも魅力です。
視覚障害者の読書手段としてもオーディオブックは有効です。一般の活字本、点字本、オーディオブックなど、さまざまな形態の本が誕生したことでだれもが自分の好きな方法で読書を楽しめるようになりました。
政府では「読書のバリアフリー」と称し、2019年には「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(通称:読書バリアフリー法)」を制定しました。バリアフリー法の内容は以下のとおりです。
視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等が視覚障害者等の読書に係る利便性の向上に著しく資する特性を有することに鑑み、情報通信その他の分野における先端的な技術等を活用して視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等の普及が図られるとともに、視覚障害者等の需要を踏まえ、引き続き、視覚障害者等が利用しやすい書籍が提供されること。
e-GOV法令検索 視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律
また視覚障害者に限らず、身体障害者、入院中で起き上がるのが困難な人、本を開いて文字を読む体力がない人も、オーディオブックなら気軽に楽しめます。学習としてはもちろんですが、闘病中の気分転換としても活用されているようです。オーディオブックはただ単に利便性を求めたわけでなく、全ての人に本を読む機会を作るための媒体でもあるといえます。
オーディオブックは認知症予防効果を期待できることが判明しています。株式会社オトバンクと関西福祉科学大学が行った共同研究によると、運動だけを行った場合よりも、オーディオブックを聴きながら運動した時に脳血流反応があったようです。 以下研究内容の引用です。
● 65歳以上の要支援高齢者を対象に、2種類の認知課題(オーディオブック、標準的な認知課題の計算)を用いて、運動中の前頭葉ワーキングメモリ領域の脳血流反応を検討しました。
● 運動のみ、オーディオブック×運動、計算課題×運動の3群の脳血流反応を比較した結果、オーディオブックと計算課題を活用したデュアルタスクは同等の脳血流反応が認められました。
●オーディオブックによるデュアルタスクの有効性が考えられ、認知症予防のトレーニングにおける新たなツールとしても期待できます。
オーディオブックと運動のデュアルタスクに、認知症予防トレーニングと同等の脳血流活性作用を新たに発見〈日本早期認知症学会で発表〉|株式会社オトバンクのプレスリリース (prtimes.jp)
認知症予防では一度に2つの動作をするデュアルタスクが効果的とされています。デュアルタスクは脳血流の活性化が期待されますが、オーディオブックはそれに効果的であることが科学的に明らかになりました。オーディオブックは医学的にも期待が高まる分野となっています。
オーディオブックというと小説やビジネス書といった書籍の朗読をイメージする方も多いのではないでしょうか。しかし、書籍はもちろんですが、オーディオブックは語学や講演・インタビューに特に向いています。その理由は大きく分けて以下の3つです。
語学やインタビュー音声では紙の書籍では体験できないオーディオブックならではの利点を生かすことができます。
特に語学学習では紙の教科書とオーディオブックの併用が効果的です。言語を習得するためには、「読む」だけでなく「話す」「聞く」といった能力が必要となります。知らない言語を文字で読むだけでは発音の仕方が分からないため、なかなかリスニング力やスピーキング力は身に付きません。
そこで、活躍するのがオーディオブックです。生まれたばかりの赤ちゃんは周りの大人の言葉を耳で聞いて言葉を理解していきます。聴覚は言語学習において重要な役割を担っているといえるでしょう。
語学学習では、オーディオブックで文字を見ながら発音を聞き、さらに聞いた文章を繰り返す「シャドーイング」を行うことで覚えやすくなります。また、オーディオブックはいつでもどこでも聞くことができるため、同じ箇所を何度も繰り返し聞いて練習することでより記憶に定着するでしょう。
楽しげなインタビューを文字で表現しようとしたとき、「!」や「(笑)」を使うこともできますが、話者同士の掛け合いやスピード感を表現することが難しく単調な印象になってしまいます。 一方オーディオブックであれば、話者が話している様子をそのまま聴くことができ、その場の臨場感を味わえます。 講演やインタビュー、また落語などはもともと「聞いてもらうこと」を目的としているため、耳で聴くオーディオブックと非常に相性が良いのです。
家事や作業をしながら音声を聞くことができるのはオーディオブックの利点であると前述しました。しかし文字で内容を追えない分、難しい内容のビジネス書のようなものは「ながら作業」をしながら聴いていると内容を理解するのが困難な場合があります。 小説やビジネス書などはもともと「文章で読まれること」を想定しています。文字では難しい文語表現でも理解できますが、それを音声のみで聴いた場合には分かりにくい場合が多々あります。 対してインタビューや対談は日常の会話に近い形式で話が進められます。口語表現で進められるもののほうが作業をしながらでも内容を理解しやすく、オーディオブックに最適です。
読書の形は時代と共に変化しています。もともとは紙媒体であった本は、パソコンやスマートフォンで読める電子書籍へと需要が移り変わりました。そして、オーディオブックの台頭により、本は「読む」から「聴く」へと変わりつつあります。
はるか昔から「本」は紙に文字を書いたものとして受け継がれてきました。読書の常識を変化させたのは、20世紀後半ごろから始まったデジタル時代の到来がきっかけといえるでしょう。コンピューターの登場からはじまり、携帯電話、オーディオプレーヤー、スマートフォンが発明されるなど急速なIT化が進みました。それに伴い紙媒体のIT化が進み、いつでも手元の端末にダウンロードできる電子書籍が拡大。かさばる紙の本を持つ必要がなくなりました。さらには文字すらも読まなくていいオーディオブックが拡大しています。インターネットを活用したe-ラーニングが普及する教育業界、読書のバリアフリーを目指す医療・福祉業界など、今後さまざまシーンでオーディオブックのさらなる活用が期待できそうです。
紙媒体の需要減、若者の活字離れなどが嘆かれる一方、それに代わる媒体としてオーディオブックは重要な役割を担うことが期待されます。しかし注目が高まるオーディオブックですが、まだまだ数が少ないのも現状です。特に、図やデータを多用する専門書や図鑑のような本はオーディオブック化が難しいという課題があります。
読書は「読む」から「聴く」へ変化しつつありますが、紙の書籍、電子書籍、オーディオブックそれぞれがメリット・デメリットを補い合うことで「本」というコンテンツは今後も成長していくでしょう。
デジタル化の発展によって、読書は「読む」から「聴く」へ変化。特に人気が高まったオーディオブックには「すきま時間」にいつでもどこでもコンテンツを楽しめるといった多くのメリットがあります。 小説やビジネス書のほか、語学や講演など幅広いコンテンツに対応できるオーディオブックは、教育や医療分野においても活用が期待されます。ぜひ豊かな学びを得る手段として日常生活のなかにオーディオブックを取り入れてみてはいいかがでしょうか。